2004年に、日垣隆氏と松沢呉一氏の間で論争があった。この記事ではそれについて記述する。
発端
発端となったのは次の記事である。
真実・篠田博之の部屋[番外21][2001年3月23日]http://www.pot.co.jp/matsushinoda/010323.bangai21.html
後半が日垣氏に関する記述である。その部分の論点は次の通り。
- 日垣隆著『ウソの科学騙しの技術』に次の記述がある。
「雑誌や本でも対談や座談会はたくさんありますが、対談者の一方がすべて文章化の作業に当たる、というのは初めての試みだといっていいのでしょうね」
なお、この本はTBSラジオ『サイエンス・サイトーク』でのインタビューを文字おこししたものであり、発言者はTBSの有村美香アナウンサーである。 - 「初めての試み」と言っているが、そのようなことは珍しいことではない。
- 自分で文章化しなければならないケースは、予算が少ない場合が多い。
- 有村アナは出版という仕事の詳しい事情は知らないのだろう。また、TBSという大企業で働いているので、予算が少ない仕事のことはよく知らないのだろう。
- この発言をそのまま載せてしまうということは、著者である日垣氏もこの発言を肯定しているということだ。 そうでなければ、編集段階で削除すればよい。
- 日垣氏が出版の仕事を知らないはずがないので、日垣氏は予算が少ない仕事のことなど知らないのだろう。
他に、「この発言は削除した方がよかったが、見逃した」という可能性がある。私はその後の顛末を知った上で、実際は単純に見逃したのではないかと考えている。これは推測だが、おそらく松沢氏もその可能性は考えたが、意地悪をしたのではないだろうか。しかし、上記の記事に対しての日垣氏の反応は違った。
日垣氏の反論
日垣氏は記事が公開されてから3年後の2004年にこの記事に反論した。
日垣氏は有料メールマガジンで反論したため、発言の元となる媒体やURLを示すことはできない。反論の原文を見たい方は日垣氏の有料メールマガジンの会員になり、バックナンバーを探していただきたい。ただし、内容はのちに挙げる松沢氏のページに引用されている。反論の主旨は次の通りである。
- 自分で文章化しなければならないケースが珍しくないことは知っている
- 松沢氏の批判は無根拠であり曲解している
- 自分は原稿料・印税についてオープンに語っているが、松沢氏はタブーを侵すことを恐れてそれができない
最後の一つは反論ではなく、批判を追加したものである。
松沢氏の反論
これに対し、松沢氏による反論が日垣氏による反論の引用と共に次のページに載っている。
内容としては、最初の記事について内容をもう一度説明したものになっている。また、インターネット上の記事に対して論じているのだから、対象記事のURLを示した上で記事に反論するよう日垣氏に要求している。
これは当然の要求であると私は考える。なぜなら、自分の読者には相手が何を主張しているかという情報を与えず、自分の主張のみを伝えることになるためである。雑誌などの記事に対するものであれば、どの雑誌の何号の記事に対して論じているのか明記するし、書籍であれば何という書籍の何ページか明記するだろう。インターネットの場合はそれがURLであるというだけである。
その後
その後、日垣氏から松沢氏へのメールが送られたようだが、松沢氏はこれを公開することを事前に宣言しており、以下の記事で見ることができる。
主な主張、反論は次の通りである。
日垣氏の主張: 最初の引用が不正確である
松沢氏の反論: 最後に引用終了を明示しているだけであり、文意を損ねるものではない
日垣氏の主張: 松沢さんが引用された私の文章で、平均的な国語力の読み手に対しては、それ以上の追加的説明は必要ないと思いました。(原文ママ)
松沢氏の主張: 現に私はこれに対する説明を求めているわけです。(原文ママ)
私自身は、日垣氏の後者の主張は意味がわからない。有料メールマガジン内で行われた日垣氏による反論は松沢氏の記事の内容を曲解しており、反論になっていない。それをもって「それ以上の追加的説明は必要ない」とされてしまっては松沢氏は同じことを繰り返すしかない。しかし、相手にそれ以上追求する気を起こさせないようにするという見方をすれば、有効であるように思う。現に松沢氏はここで追求を止めている。
『摩羅の肖像』と松沢氏と日垣氏
松沢氏には『摩羅の肖像』という著書がある。日垣氏はその著作に触れつつ、次のページを公開している。
魔羅の肖像~ルーヴル美術館編~(その2)
http://www.gfighter.com/0031/20020624002204.php (Wayback Machine)(Web魚拓)
その後、次の電子書籍を販売している。
魔羅の肖像――ルーヴル美術館を笑ふ――
http://voyager-store.com/index.php?main_page=product_info&products_id=6239(Web魚拓)
つまり、『摩羅の肖像』というタイトルの本があることを知っていたが、あえて同じタイトルの電子書籍をリリースしている。その事に対する松沢氏の反応は次の通りである。
私なら避けますけど、日垣さんは避ける気がないってことでしょう。それ以上は特に何も。 RT @oni_oc 日垣隆先生 @hga02104が「魔羅の肖像」http://bit.ly/b19BEcなどというまぎらわしい電子書籍を販売していることを松沢呉一さんはどう思っているのだろう — 松沢呉一さん (@kureichi) 11月 27, 2010