2011/09/19

『情報の技術』のPDFは何部売れたのか 『電子書籍を日本一売ってみたけれど、やっぱり紙の本が好き。』(講談社)編

この記事を理解するためには、前の記事に書かれている次のことを理解しておく必要があります。

  • gfighter.comではひとつのPDFを1000部/月しか売れない
  • 『情報の技術』の販売開始時期は2009年10月~2010年1月

 

『情報の技術』のPDFは2011年4月時点で×万部売れたとされている

日垣隆著「電子書籍を日本一売ってみたけれど、やっぱり紙の本が好き。」の p.29~30に次の記述があります。

私が95年から96年にかけて月刊誌に連載した、「情報の技術-インターネットを超えて」(朝日新聞社)という本があります。書籍の発売は97年です。その後、文春文庫で「情報系 これがニュースだ」となり、それなりの数がうれました。しばらくして、出版社の都合もあり、絶版扱いになってしまいます。仕方ないですよね。
(中略)
そんな本が、絶版のまま読者に届かない状況を座視しているのは、この業界にいる者としてまさしく不届き。私は自らのサイトでPDF化して売ることにしました。PDF化にかかった費用は1500円程度です。専門業者に依頼しました。サイトで売るPDFの定価は1部1500円に設定したので、1冊売れれば元を取れる計算になります。しばらくして、売り上げが順調なことを聞いた出版社の方も、我がことのように喜んでくれました。
ところが、「×万部を超えました」と話した瞬間、気まずい沈黙が(笑)。

講談社のサイトより、この本の発行年月日は2011/4/28です。したがってこの文章はそれ以前に書かれたことになり、そして書かれているエピソードは文章に書かれる前に起きたことになります。
ちなみに前の記事で触れている日刊サイゾーの記事の公開日は2010.07.21となっており、この記事では問題のPDFが売れた数は「10万部以上」となっていますが、その9ヶ月後に発売されたこの本ではそれを「×万部を超えました」と表現しています。そのことは指摘しておくに留めます。

上記の記述から『情報の技術』のPDFは2011年4月以前に販売部数が×万部を超えたとされていることがわかります。
この「×万部」の×には何が入りうるのかを検証していきます。

「×万部」の×には1しか入り得ない

2009/10~2011/4までは3+12+4=19ヶ月あります。
gfighter.comではひとつのPDFを1000部/月しか売れないという注文数制限がありますから、19×1000=19000となり最大でも19000部しか問題のPDFを販売する事はできません。 システム上(あるいは契約上)販売可能な最大数であり、加えて期間もかなり甘くとっていてもこの数字になります。
すなわち、×には最大でも1しか入りません。0もありえますが、「0万部を超えました」とは言わないでしょうから、ここには1以外の数字は入りません。

結論と疑問点

問題の「×万部を超えました」は1万部しか該当せず、2万部以上は該当しないことがわかりました。問題の書籍『電子書籍を日本一売ってみたけれど、やっぱり紙の本が好き。』(講談社)には次の疑問が残ります。

  • システム上1万部台が限界なのに、それを「×万部を超えました」と表現したのは何故か
  • 日刊サイゾーの記事では「10万部以上」としていたのにそれを「×万部を超えました」と変更したのは何故か
  • 問題のPDFは本当はいったい何部売れたのか

参考資料

小飼弾「私の友人に日垣隆(ひがきたかし)さんというライターの方がいるんですけど、ただのPDFファイルを1万部売ったんですよ。」― 慶應義塾大学SFC研究所 プラットフォームデザイン・ラボ主催シンポジウム「電子書籍ビジネスの未来」(2010年4月13日)USTREAM中継アーカイブより
http://www.ustream.tv/recorded/6153012/highlight/219294

「電子書籍の衝撃」の衝撃 - 小飼弾(2010年4月8日)
http://agora-web.jp/archives/978645.html
※「日垣隆氏は「単なるPDFファイル」を一万部以上売ったそうです」という箇所が日垣氏のツイートにリンクされているが、リンク先は存在しない。